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著:W・G・ゼーバルト 訳:鈴木仁子 版元:白水社 P298 四六判上製 2020年2月
装丁:緒方修一 解説:多和田葉子
建築史家アウステルリッツは、帝国主義の遺物である駅舎、裁判所、要塞、病院、監獄の建物に興味をひかれ、ヨーロッパ諸都市を見て回り記録している。本書の語り手である「私」は、彼の話の聞き手であり、その語りは近代における暴力と権力の歴史とも重なり合っていく。ときおり写真を挿むこの書が、小説なのか、エッセイなのか、それとも紀行文なのかと、ジャンルに振り分けようとする人には向いていない本かもしれない。しかし、緻密でありながら、幻想的で美しい、彼のものでしかない作品に魅了される人がいることも確かだ。著者自身は自分の作品を「ジャンルを特定できない散文作品」と呼んでいたそうだ。残念ながら、2001年に自動車事故で他界している。