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著:藤原辰史 版元:ミシマ社 P192 四六判並製 2020年11月刊 装丁:鈴木千佳子
農業史、食の思想史を専門とする著者が「縁食」というあたらしい食のあり方を提案する。子ども食堂、炊き出し、町の食堂、居酒屋、縁側……オフィシャルでも、プライベートでもない、そのめぐりあわせでつながった食のあり方を著者は「縁食」と名付ける。
「縁食とは、孤食ではない。複数の人間がその場所にいるからである。ただし、共食でもない。食べる場所にいる複数の人間が共同体意識を醸し出す効能が、それほど期待されていないからである。」
ゆるやかにつながった人たちと食事の時間を過ごす、ということだ。私たちはいつから人とゆるやかにつながることが不得意になってしまったのだろう。「茶の間」という場所は、昔はもっと開かれていたようにおもう。しかし、そこに戻ることは難しいので、藤原さんの言うように新しく「茶の間」に代わる場所をつくったり、探したりすればいいのだ。世界人口の9人に1人が飢餓で苦しむ地球、義務教育なのに給食無料化が進まない島国、誰かと食卓を囲みたいのにひとりぼっちで食べる子供や老人……食にまつわる問題は世界中にある。環境破壊が進むいま、さらに増え続けるだろう。まずはこの本を読んで食のあり方を考えてみてはいかがでしょう。