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著:武田砂鉄 版元:暮しの手帖社 P240 四六判並製 2022年9月刊 ブックデザイン:宮古美智代 装画・挿画:浅妻健司
本作は、新聞、書籍、ラジオ、テレビ、雑誌、SNSなど、著者が街中の声に耳をそばだて、言葉を拾い集め、その言葉について考えた本。『暮しの手帖』の2016年から22年までの連載が書籍化された。どの言葉にも重みを感じたが、公認心理師の方の「『誰かを殺したい』と口にする人がいたら、臨床現場では『助けて、と言っている』と受け取ります」という言葉が頭から離れない。「一旦レールから外れると戻れなくなる。外れてしまった人たちがなぜ戻ってこられないのか、そこを丁寧に考え続けたい」と著者は結ぶ。言葉そのものや著者の論考よりも、それらが複合的に「考えること」を促す力が、この本のいちばんの魅力かも。「言うこと聞かせる番だ 俺たちが」。亡くなるまで病と闘いながら、路上で声を上げ続けたラッパー・ECDの3・11以降、逃げ回る為政者へと向けられた言葉。それを受けて、「主権は国民にある。ここを勘違いしているのは、政治家だけではない」と著者が語る。反対したからって何も変わらないと冷笑する人たちには、反対しなかったら何も変わらないと答えたい。「怖がって沈黙する人々の国にだけはならないようにしよう」とロシアの反政府活動家のナワリヌイも言っている。