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著:藤本和子 版元:筑摩書房 P320 文庫判 2020年11月刊 解説:斎藤真理子
『塩を食う女たち』に引き続き、藤本和子さんの黒人女性への聞き書きの書が復刊。1980年代アメリカに暮らす著者は、刑務所の臨床心理医やテレビ局オーナーなどの働く女たち、街に開かれた刑務所の女たち、アトランタで暮らす104歳の女性…さまざま黒人女性に話を聞く。女たちは、黒人であり女性であるという二重の差別に遭いながら、さまざまな困難を抱え仕事をしている。著者は彼女たちの話に耳を澄まし、その思いを書きとめた。しかし、そこにあるのは苦悩だけではない。彼女たちの力強い声がある。たとえば……「ブルースなんてただの唄。かわいそうなあたし、みじめなあたし。いつまで、そう歌っていたら、気がすむ?こんな目にあわされたあたし、おいてきぼりのあたし。ちがう。わたしたちはわたしたち自身のもので、ちがう唄だってうたえる。ちがう唄うたって、よみがえる」三十年以上経っても、まったく古びていないどころか、いま必要な一冊です。