

SOLD OUT
著:鹿子裕文 版元:ナナロク社 P456 B6変形 並製 2020年1月刊
装丁:祖父江慎+根本匠(cozfish) 編集:川口恵子
校正:牟田都子 装画:奥村門土(モンドくん) 総扉文字:奥村今
電波の届かぬところで 革命の音が鳴っている
「この冬の時代を、めげんで、あきらめんで、やめずにやり続けた人間には、かならず、かならず、いい時代がめぐってくる! だからみんなあきらめんなっっ!」
著者は前作『へろへろ』で、型破りな介護施設「よりあい」という場所をつくりあげる人々とその過程を描いた。そして今回は〈場〉そのものを描く。舞台は、福岡・北天神地区にある〈はみ出し者〉たちが集まるライブハウス。次々にいかれた人たちが現われる。場をつなぐ、ということにおいて音楽にかなうものはないのかもしれない。もどかしさ、というものがない。著者はそのことを「年齢も性別も国籍も、生まれも育ちも置かれた境遇も関係なく、ただ余韻をわかちあうことでつながっている」と表現する。しかし、この物語は決して音楽だけの話ではない。むしろ〈場〉の話だ。世の中をうまく渡れない人々には、自分たちの居場所が必要だ。誰かが必要としている場所はふいに消えることもある。その灯を消さないようにあがく人たちの話でもある。だから読み終わっても彼らの物語が終わることはない。必要としている人がいる限り〈場〉は続いていく、と信じたい。