







著:デレク・ジャーマン 写真:ハワード・スーリー 訳:山内朋樹 版元:創元社 P148 B5判変型上製 2024年4月刊 日本語版装丁・組版:五十嵐哲夫
『Derek Jarman's Garden』が、製版のデジタルリマスターにより、約30年ぶり待望の新訳復刊!
映像作家デレク・ジャ―マンが、イギリス最南東の海辺の町ダンジネスで、黒く塗られた黄色い窓枠のある漁師小屋を見つけたのは1986年のこと。原子力発電所に近い玉砂利体積地帯で、潮のしぶきを運んでくる東風が吹く、作庭に向いているとはいえない荒涼とした土地だ。HIV感染が判明していた彼は、そこを終の棲家と決め、〈プロスペクト・コテージ〉と名付けた小屋の周りに、仲間たちと美しい庭を造った。花壇は浜辺に打ち上げられた燧石でつくられ、植物の傍らには拾った廃材や戦争遺物などからなるオブジェが配置されている。戦争を繰り返してきた人間の歴史や、同性愛者として生き、病気とともに暮らし、人を愛した彼の人生が庭のそこここに垣間見える。植物を育てることは、晩年の彼をどれだけ生かしただろう。彼は、1994年に52歳でこの世を去った。いまでも庭では花が咲いているという。