著:藤本和子 版元:岩波書店 P270 A6 判 並製 2018年12月刊
解説:池澤夏樹
「アフリカから連れてこられた黒人女性たちは,いかにして狂気に満ちたアメリカ社会を生き延びてきたのか。」
公民権運動が一段落した1980年代に,日本からアメリカに移り住んだ著者が,北アメリカの黒人女性からの聞き書として記録した文章。「わたしたちがこの狂気を生きのびることができたわけは、わたしたちにはアメリカ社会の主流的な欲求とは異なるべつの何かがあったからだと思う。」作家であり、運動家であるトニ・ケイド・バンバーラが著者にこのように語ったのは真夏の真夜中。言葉はその後も続くのだが、「わたしは、そう、この言葉を聞くためにアトランタまできてしまったのだと思った。」と著者は言う。黒人であり、女であるという二重の差別を受けた多くの女性たちが語る声は、時を超えたいまでも、深く胸につきささる。