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著:斎藤真理子 版元:イースト・プレス P368 四六判並製 2025年1月刊 ブックデザイン:鈴木成一デザイン室
大きな話題を呼んだ原著に、この2年、激動する韓国文学の重要作の解説を加筆、40頁増の新版登場!
・著者メッセージ
本書の初版は二〇二二年七月に刊行された。その後二年と少しの間に、新たに多くの韓国文学が翻訳出版された。増補新版ではその中から注目すべきものを追加すると同時に、初版時に紙幅の関係などで見送った作品にも触れることにした。特に「第7章 朝鮮戦争は韓国文学の背骨である」の章に多くを追補している。その作業を進めていた二〇二四年十月に、ハン・ガンがアジア人女性として初のノーベル文学賞を受賞した。本書を読めば、ハン・ガンが決して孤立した天才ではなく、韓国文学の豊かな鉱床から生まれた結晶の一つであることがわかっていただけると思う。海外文学には、それが書かれた地域の人々の思いの蓄積が表れている。隣国でもあり、かつて日本が植民地にした土地でもある韓国の文学は、日本に生きる私たちを最も近くから励まし、また省みさせてくれる存在だ。それを受け止めるための読書案内として、本書を使っていただけたらと思う。(「まえがき」より)
本作は、韓国文学がなぜこんなに面白く、今の日本で支持されているのかを読み解く読書案内であり、韓国の社会と歴史を知るための書でもある。石牟礼道子の『苦海浄土』とチョ・セヒの『こびとが打ち上げた小さなボール』、二つの小説を比較し共通点を見い出し、「記録された『声』は今も全く古びることがなく、それを全く古びることのない表現が支えていると感じる」と著者は言う。「こびと」に限らず、韓国文学は個人の物語を描いていても、社会的背景が色濃い。その理由が本作を読むとよくわかる。本書を読めばどれもこれも読みたくなって、すでに読んだものも再読したくなります。