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著:松田青子 版元:中央公論新社 P264 文庫判 2024年4月刊 写真:石野郁和 装丁:大島依提亜 解説:小林エリカ
海外でも注目を集める作家・松田青子の短編集。「誰のものでもない帽子」では、母親がコロナ禍で子どもを連れて逃げる。来週からリモートワークになると夫に告げられた彼女は、耐えられないと思い、隠し持っていたクレジットカードを頼みの綱に知らない街のホテルへと向かう。彼女を救うのはSNSで偶然目にした「結婚する時、もしもの時に逃げられるお金を隠しておいたほうがいい」という知らない女の人の言葉。どの物語にも通底するのは「連帯」の意識。たとえ見知らぬ人々でも、世代が違っても、あるいはジェンダーが違っても私たちは連帯することができるし、連帯することで乗り越えられることがある。読む私たちはすでに連帯していると思えてくる。※文庫版です。