著:イリナ・グリゴレ 版元:亜紀書房 P256 四六判並製 2022年7月刊 装丁:寄藤文平+古屋郁美(文平銀座)
著者は、社会主義政権下のルーマニアに生まれ。川端康成の「雪国」との出会いが彼女を日本へと向かわせ、人類学者となった現在も日本に暮らしているそうだ。混乱したポスト社会主義の中で少女時代を過ごし、1986年のチェルノブイリ原発事故にも影響を受けている。幼い頃、祖父母のいる村で暮らした彼女は、祖父母がつくった野菜を食べ、新鮮な牛乳をのみ、摘んだ野草を食べた。チェルノブイリの雲は彼女が遊んでいたカモミール畑まで来て、見えない暗い毒を浴びせた。その毒や、両親が独裁政治から受けた恐怖が、のちに彼女の身体を蝕む。「社会主義とは、宗教とアートと尊厳を社会から抜き取ったとき、人間の身体がどうやって生きていくのか、という実験だったとしか思えない」と彼女は言う。母語ではない言葉で書くことによって、彼女は語るための言葉を獲得した。