著:アフガニスタンの女性作家たち 訳:古屋美登里 版元:小学館 P256 四六判並製 2022年10月刊 装丁:川名潤 写真:Graham Crouch/Alamy
あとがきに「この作品集には重要な部分が欠けています。それは「作家紹介欄」です」とある。アフガニスタンの女性作家18人が書いた短編集だから。この作品はタリバンが2021年に政権を奪還する前に書かれており、以降は女性への抑圧がさらに強まっている。教育の機会を奪われ、ブルカの着用を義務づけられ、単独での遠出を禁じられた。収められた23の短編には、思わず目をそらしてしまいたくなる物語もある。結婚式での自爆テロ、命がけの通勤、家庭内暴力、貧困。どれも日常生活のなかで起こること。しかし彼女たちのペンは同時に希望も描く。カブールの学校で自爆テロのトラックが爆発し、少女が多数殺された事件に材をとり書かれた物語はまさにそう。 「わたしたちは闘いの苦しみをものともしないで勇気を示さなければならないのだ」と、友人をテロ行為で亡くした主人公の少女は語り、事件が起きた学校へと向かう。彼女たちに連帯を示せるとすれば、それは彼女たちの言葉を読むことだろう。表紙の写真は顔の見えない女性。全身を覆う青いブルカは風で少しふくらみ、鳥の翼のように見える。私たちは、羽根の一枚となるために読まなければ、と思う。