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著:エーリン・ペーション 訳:ヘレンハルメ美穂 版元:小学館 P178 四六判上製 2024年2月刊 装丁:重実生哉 装画:小山義人
描かれるのは、アフガニスタンからひとりきりで逃れ、スウェーデンに辿り着いた少年たちの日常。彼らは祖国への送還の可能性に怯えながら日々を過ごす。どのように家族と別れ、困難を乗り越え、いまいる場所に辿り着いたかは語られないが、現在の彼らの様子は細部を丹念に切り取るように描かれる。少年たちを見つめる視線の持ち主は主人公のレベッカ。難民児童たちが暮らす施設の新人職員で、三人の少年を受け持っている。来たばかりのザーヘルは十四歳、アフメドとハーミドは十七歳。十八歳を迎えて成人すれば、たとえ過酷な運命が待っていても送還の可能性は高くなる。少年たちは、みな傷を負っている。胸を横切るように走るハーミドの傷跡を見て、レベッカは心にひそむ見えない傷をも感じるが、指示通りに働くことを求められる彼女にはどうすることもできない。孤独と不安を抱えた少年たちと、無力感に苛まれるレベッカ。難民問題を身近に感じることができない人も、彼女の葛藤や少年たちの孤独には心を寄せるはずだ。三人の少年たちの背後には、何万人ものアフガニスタンの少年たちが存在している。