

著:山崎佳代子 版元:筑摩書房 P286 文庫判 2025年4月刊 カバーデザイン:五十嵐哲夫 解説:小林エリカ
本書は、2001年から12年までの暮らしの点描。文庫化にあたり、近年6年間をまとめた日誌も増補された。著者は詩人で、1981年よりセルビア共和国ベオグラード市在住。戦渦のまっただ中にあってもこの町を離れなかったが、国の名前は何度も変わり、ユーゴスラビア社会主義共和国連邦から、今はセルビア共和国となった。NATO空爆の悲惨な記憶、難民の子どもたちとのふれあい、詩のこと、友人や家族のことなど、日常の出来事が描かれるなか、戦争の気配が通奏低音のように日誌に潜んでいる。だが同時に闇を光で押し返そうとするように詩が存在している。「詩とは何か」と問われた著者の答えは、「一番深い闇の中から発する幽(かす)かな光、それが詩」。
『ベオグラード日誌 増補版』目次
はじめに
またひとつ舟が出ていく ―― 2001年6月23日~12月26日
貝のための子守唄 ―― 2002年1月26日~12月27日
血まみれの童話 ―― 2003年1月1日~12月25日
痕跡 ―― 2004年1月2日~12月26日
谷に響く笛 ―― 2005年1月1日~12月24日
骸骨の瞳、骸骨の口 ―― 2006年1月5日~10月8日
軽くて小さいが麗しいもの ―― 2007年1月3日~5月7日
あきらめないでください ―― 2009年5月~2012年6月
終わりに ―― 「小さな言葉」という小窓から
続・ベオグラード日誌 ―― 2019年1月1日~2025年2月18日
解説 小林エリカ